タネノオト #024
- 河野文

- 2020年1月11日
- 読了時間: 1分
タネノオト #024
なおも深めに 松の緑か禿の名ある 二葉の色に
長唄・作曲年代不詳
多くの人が最初に出会う長唄といえば「松の緑」です。
その「前弾き」は近所のお稽古の音として小説に登場するほど有名でお弟子さんにとっては最初の試練でもあります。
歌詞が「今年より千たび迎うる春毎になおも深めに松のみどりか」ではじまるため、お弾き初めで演奏されたり、みんなで弾ける曲ということでおさらい会の最初のほうに演奏されることも多いです。
杵屋佐久吉・著「長唄演奏 教習の実際」のなかで、松の緑の研究とともに
「松の緑に無理なくとりつかせるための初心者指導」というくだりがあるほどです。
実際のところは「松の緑にはじまり松の緑に終わる」と言われるくらい難しい曲です。そのため「松の緑」を前弾きのみにとどめて「末広がり」をお稽古する方もあり、その後に進むお稽古タイプがその時点で判別されると考えています。
娘の成長を花魁の出世にたとえて寿ぐ、1曲目からまさかの吉原設定です。先生から「外八文字ってしってる?」と聞かれ目の前で実演されたのは10代のときのこと。帰って「今日、先生が外八文字やってくれた」と言ったときの家族のびっくりした様子は忘れられません。




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