タネノオト #030
ものさわがしや貴船川
長唄・鞍馬山1856(安政3)
20年前、学校の試験で鞍馬山を弾くことになりました。
紅葉を誘い文句に高校の同級生と鞍馬山方面を向かったのは12月のこと、
友人を麓に残し(その間、実家が大きなお寺の友人はずっと漫画を読んでいた、※のちにライターとなる)鞍馬から2時間くらい歩いて貴船へ向かいました。
いわれのある仏閣や名所に手を合わせつつ山に入ると、いきなり「女性の一人歩きはやめましょう」「熊出没」の看板。平日で人気のない山中で、どうしよう・・・と振り向くと
私の後を追うようにお賽銭回収の方が手際よく業務をこなされていました。
まるで漆かきのように腰の袋にちゃっちゃとお金を集める姿に、パワースポットながら現実を思い知り冷静さを保つことが出来ました。
その後、牛若丸が足腰を鍛えたといわれる木の根道に足を取られつつもどうにか貴船へ。日中でも暗く僧正坊がどこからか見てるかなと思うほど。風が吹けば木の葉が合唱しこれが夜なら天狗たちも来ちゃうよね、と曲の冒頭を想像しました。
鞍馬山は2016年にも、演奏のお礼参りで行きました。着いたら災害の影響でケーブルカーが運休になっていて、まぢか!!と心の中で叫びました。ハタチの頃は何の疑いもなく好奇心をもって当然のように歩いたのに・・・今こそ牛若丸の心持でと杖を握り直し本殿へ向かいました。