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タネノオト #056

打擲す 通れとこそは罵りぬ

長唄・勧進帳 1840(天保11)



ご存知「勧進帳」やっと疑いが晴れて関所を通過できるのに、モタモタした義経のせいでまたstopがかかり大ピンチ。咄嗟の機転で、みんなの前で義経を罵倒した上に暴行を加え、最後に「さっさと行けーー」と罵る。でも実は主人を守っているという有名な場面です。


罵るってハラスメントだし・・・しかも暴行・・・


長唄で起こっている事件を現代の刑罰から、その量刑はいかほどか、法律の詳しい方にうかがってみました。こちらは軽い気持ちでうかがってしまったのに大変丁寧な回答をいただき、またそれが面白く一部変更しつつ掲載します。



 弁慶は有形力を行使しているので暴行罪が成立。また杖で義経を打ち付けているので、義経にアザができていれば傷害罪になり15年以下の懲役又は50万円以下の罰金の可能性。しかし義経達は、関所を通過するためには何があっても弁慶に従うとしているので、義経(被害者)の同意があり違法性が阻却され無罪になります。

 ただし関所を通過した後に、義経が「あれって事前の打ち合わせよりやりすぎじゃね?」とか言い出すと、違法性を帯びる可能性が高くなります。この場合義経のケガの程度にもよりますが、義経が病院に行かなければならず、奥州に行く前に足止めを食らったという史実がないため、おそらく全治1週間の傷程度のケガであれば関所を通過するためにやむなくやったということになります。また弁慶が真摯に反省をしていることなどの全体の情状を考え、罰金20万円程度の略式裁判で済むのではないかと思います。

 しかし、弁慶は、義経と会う前はかなりの暴れん坊でしたから、粗暴犯についての前科があるかもしれません。執行猶予中であれば、当然執行猶予が取り消されて懲役の実刑になります。たぶん、4か月から6か月くらいでしょうか。また執行猶予中でなくても、前刑の執行終了から5年以内に今回の暴行に及んでいる場合には、累犯になりますから懲役4か月くらいの実刑になる可能性があります。


分かって見逃した富樫についてもうかがいました。


 冨樫は、犯人隠避や証拠隠滅に当たる可能性がないわけではないですが、義経が犯罪を犯していないと両罪とも成立しないです。義経の犯罪は、国家転覆罪?だとすると殺人罪が大量に成立します。義経に犯罪が成立するのはどうか・・という流れになるわけでここは判官贔屓で終わりたいと思います。

 

 実は、その他「助六」「安達ケ原」「鳥羽恋塚」などの量刑についてもうかがいました。

これは是非またの機会に。「かさね」「棒しばり」も興味あります。


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