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タネノオト #060

錦繍の帳暮れ行く中空に誰が釣舟の玻璃の燈し火白白と

長唄・新曲浦島 1906(明治39)


錦繍(きんしゅう)は刺繍を施した織物のことですが、美しい紅葉の意味で使われるこもあり、ここでは綾錦のような夕暮れから錦秋が想像されます。





長唄には既に「浦島」があり、この曲は「新曲浦島」と言います。

坪内逍遥は日本の新しいオペラを作るべく、壮大な長編戯曲「浦島」を企画しました。謡曲・清元・常磐津・雅楽・民謡・洋楽にいたるまで、あらゆる音楽を取り入れ、その中で序曲は長唄で作られました。しかし坪内逍遥はこの大規模な「浦島物語」を完成することが出来ませんでした。唯一残ったのがプロローグの長唄「新曲浦島」でした。


そのため、新曲浦島には浦ちゃんもオトちゃんも登場することはありません(亀さんも)。さまざまな海の景色がうたわれて、これから始まる壮大なドラマにわくわくするような、いよいよだぁ!と背筋を伸ばしたところで終わります。


明治時代を代表する曲であり岩に砕ける荒波を表すのに三連符を使うなど、西洋音楽の作曲法を用いているかと思えば、アカペラの「舟唄」を取り入れたりと、唄の聞かせどころも多い名曲です。





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