歌う小唄の声高輪に
長唄・吾妻八景 1829(文政12)
○○八景というのは中国由来の言葉で邦楽曲には長唄「巽八景」箏曲「近江八景」東明「大磯八景」などがあります。「吾妻八景」の場合はピッタリ8箇所にこだわっているわけではなく言い換えれば「大江戸名所めぐり」日本の記憶御用達アプリ大江戸今昔めぐりに似ていますね。縁語や掛詞を巧みに使って名所から名所へ、そして朝から晩まで24時間が過ぎる間に少しずつ季節も移ろい、20分ちょっとで「タイムスコープ1829!大江戸24時!」を体感できます。邦楽によくある「これといった筋はない曲」ではありますが言わずとしれた「お座敷長唄」の代表曲・名曲です。私の二番目の三味線師匠、故・中島勝祐先生は「吾妻八景の上調子は何度やってもいい曲」と教えてくださいました。
今回は曲中に登場するエリアをリストアップします。
◎日の本の橋→日本橋
◎御殿山
◎高輪
◎「佃合方」→大川→永代橋〜佃島
◎初音→ほととぎすの名所→白山あたり
◎駿河の名ある台の→駿河台
◎台のよせいのいや高く見下ろす岸→JR御茶ノ水駅聖橋あたりから川をみた感じ
◎阿弥陀笠→神田山日輪寺・説(移転して浅草ビューホテルの近く)
◎宮戸川→水神〜吾妻橋(浅草川とも言う)
◎浅草・御寺→浅草寺
◎矢大臣→浅草寺裏
◎隅田川→吾妻橋〜永代橋
◎紙砧・砧合方→吉原で出た紙屑やボロを原料として三谷あたりで再生紙を作っていた。サステナブル
◎棹さす舟もいつ超えたやら衣紋坂→浅草寺裏から外れて待乳山のふもと、そして三谷堀のいつものコース(舟で日本堤まで)はっきり吉原とは言ってないけど吉原方面
◎忍ヶ岡→不忍池のほとり
◎浮島→不忍池弁天
※川の名称区分は諸説あり、今はまとめて「隅田川」と言っている
八ヶ所では済まないのに「めぐりてや見ん八つの名どころ」で終ります。
↑ざざっと書いただけでも16ヶ所。さあGOTO吾妻八景!どの8景を選びます!?
不忍池の弁天堂には杵屋六翁歌碑があります。
安政二年の大地震の後に、自分の歌碑が不忍池に落ちている(近所に住んでいた)のを知った晩から発熱し帰らぬ人となりました。現在の歌碑は倒壊埋没していたものを昭和31年に長唄協会が復興しました。それもそのはず、、作曲者、杵屋六三郎・後の六翁は吾妻八景のほかにも「勧進帳」「松の緑」「老松」などの名曲を遺しています。手ほどき曲や目標曲があるのも六翁さんのおかげ。お世話になっております。
時世 濁りなく 世をすましけり 蓮の露
歌碑 たるまねば どなたもよしや 綱よりも 細き三筋の 糸の世わたり
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