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執筆者の写真河野文

タネノオト#004

タネノオト #004

やれ待とうぞ猿ひき 

長唄・靭猿1872(明治2)


実際に「やーれ まとおぞ 猿ひきっ!」と言っているのは家来の太郎冠者。

猿ひきを呼び止めどこへ行くのかを尋ねたところ、仕事で得意先まわりをしているとのこと

先を急ぐ猿ひきに「ちょっと待てよ!」とキムタク風。その後、大名の紹介からの衝撃「猿の革頂戴」発言に続くところです。


「やれ」とは「おい」とか「やあ」と呼び止める時にも使われます。しかし今の時代、外を通りかかった見ず知らずの他人に「おい」とはなかなか言えません。自分のほうが偉いとか強いとか思ってないと発言できない言葉だし、今ならパワハラで訴えられないかと、ついついハラスメント防止マニュアルを開いてしまいました。


現代ならば、警察官が「ちょっとそこの猿ひきさん!待ちなさい!」と言えるかな。突発的なことや緊急を要することでもない限り言えないことですし、そんな事態にはならないことを願っています。出来ることなら「やれ」はうれしいときに使いたいことばです。


【参考文献】『長唄名曲30選[上]』奥村有敬訳(興栄社2004)




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