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タネノオト #022

更新日:2019年12月31日

タネノオト #022

亭主と見えしは誰なれば かほどに我を謀りけるぞ 長唄・明治3(1872)


長唄「今様望月」と区別をつけるため「大望月」とも言われます。


口論の末、従弟の望月に殺害された友治の家来友房は現在宿屋さんを経営中、そこに友治の妻と息子が偶然やってきます。間もなくこれまた偶然に望月も現れて・・・


今も昔も殺人は親族間に多いですが、昔との違いは現代では仇討ちを認めていないことです。敵討ちが許されていたから、忠臣蔵や曽我モノ系の話が存在し人気を集めたのかもしれません。またタイトルが仇というか容疑者のほうの「望月」で、「花若」でも「友房」でもないというのは忠臣蔵を「吉良」助六を「工藤」というようなもの、作品のスペシャル感と「望月、おまえいったい何があったんだよ・・」と問いかけたくなります。


今回、取り組むにあたり元のお能「望月」を観ました。最後に息子花若と友房が現れると望月がスーーっと失せにけります。「あれ?」と思ったら、望月が残した〝笠〟を見事に討ち取るのです。能舞台で立ち回るでもなく、討たれて倒れたりもしない。「無駄を取り除く」というのはこういうことでもあるのかなとも思いましたし、スッキリとしかもきれいにみせる終わり方というのは長唄の望月にも通じています。


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内容は盛りだくさんで、けっこう詳細に展開していくのですが、29頁45分に及ぶこの曲を暗譜するのは限界突破でして、ストーリーを把握していない時期は内容をメモにしたこともありました。

登場人物のやりとりが進行する中、謡調の瞽女さんの曲や催馬楽、鞨鼓、様々な曲の要素がちりばめられ徐々に盛り上がり、気づいたら劇中劇の「獅子モノ」になっています。


 今回の歌詞のあたりは、親子が名乗り「髪洗い」で最高潮に達し最後に仇を討ちます。

仇討ちが成功したこと、40分が経過し演奏がここまでたどり着けたこと、、私の脳内イメージは交響曲第9番第4楽章(合唱付き)って感じになり、そこに血生臭さは一切なく、花紅葉が舞い散り大団円を迎えます。


 2019年ラストの「タネノオト」はこれにて終了します。拙い文を読んでくださり、ありがとうございました。

 2020年も日本の記憶をどうぞ宜しくお願い申し上げます。



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