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タネノオト #059

タネノオト #059

夜や更けて まことに文(ふみ)は閨(ねや)の伽(とぎ)

清元・かさね 1823(文政6)


またか!と思われそうですが、今週のタネノオトまたまた「かさね」です。

九月大歌舞伎の千秋楽も近いですし。

SNSを見ていると予想以上にお客様へ人気の演目で驚きます。

コメントを拝見すると美しい、、とか切なすぎる、、とか。

以前書いたように『かさね』の魅力はやはり美しさとおぞましさ、その乖離した描写に思います。

特にかさねの心理描写は、全編通して観る側の感情をブンブン揺さぶりかけてきます。

そのせいか、とても濃く素晴らしい脚本なのだけど私は観る度にグッタリするのよね…

きっと感情の起伏に脳がついていけないんだろうな。


さて今回の一節は私が考える曲中で最も重要な箇所。

歌詞の内容は大したこと言っていません!笑

夜や更けて まことに文は閨の伽
深夜になり1人で寝室にいると手紙がいい退屈しのぎになってくれるね

かさねが与右衛門に鎌で斬りつけられる前後にあるのがこの部分。

前後のコントラストはこの“内容のほぼない歌詞”がブリッジとして重要だと思います。

与右衛門が冷酷なサイコパス男であればあるほど引き立っていい!!!!!(劇的に)

お芝居をご覧になった方は歌詞に出てくる「文」がいい小道具になっていること、お分かりになると思います。

実に日本的で、これぞストップモーションの美ですよね。


これから月の綺麗な季節です。

皆さま、深まる秋に浸ってお過ごしください。


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