タネノオト #061
飛団子
清元・玉兎 1820(文政3)
先日の十五夜は晴れた地域が多かったようで、各所で満ち満ちたお月さまが見られましたね。
この十五夜に始まり月末に控えたハロウィンなど秋を祝う楽しみは世界中にありますが、殊に日本では月雪花という言葉にもあるように3要素は多くの演目やテーマになっています。
そこで秋の月といえばコレ!という演目『玉兎』が今回のタネノオトです。
古譚や流行歌、わらべ歌など月のモチーフを1匹の兎に語らせるという趣向の『玉兎』は、金烏玉兎(きんうぎょくと)と違い大和言葉に開いて『たまうさぎ』と呼びます。
ただしコレは通称の呼び名、本名題は『玉兎月影勝(たまうさぎつきのかげかつ)』
景勝?上杉景勝。月の話に突然の武将。
江戸時代から明治の頃まで「景勝団子」という屋台がありました。
団子の形状が上杉景勝の生家、長尾家の鉾先に似ていた事からこの名がついたのだとか。
景勝団子の別名が、今回の一節。
飛団子
とびだんご、現代語訳は不要ですね。笑
主人公の兎が餅つきをして当時の風俗であった景勝団子売りを模している場面。
衣装の波柄は竹生島の波うさぎでしょうか。シャレとる。
はやがわ(は)り はねたうさぎの おもい(ひ)月
大入に入る 人の山のは <山東庵 京山>
さて、江戸時代の演目を見ていると漢語への憧れをちょいちょい感じます。
漢字を奇数並べて(およそ5文字か7文字)本名題にするのも、そのひとつでしょう。
そもそも月雪花も元はと言えば白居易の詩『寄殷協律』にある一節
雪月花時最憶君
雪の降る時、月を見上げる時、花の咲く時 君を憶う
に由来します。7文字、懐かしの七言絶句です。
演目の味わい方って多岐に渡るものだなと思います。
今は無き江戸の風俗を想像したり、大陸へ馳せた思いを感じたり、変わらない月の美しさを重ねてみたり。
夕方頃から涼しい風に当たりながらの散歩は最高ですね。
これからの夜長が断然楽しみです。
私は久々に白居易の詩を読み直してみようかな。
Comments