タネノオト #065
- 清元 延美雪

- 2020年11月1日
- 読了時間: 2分
タネノオト #065
撥に招かれて 間夫が名取の草の花
清元・助六 1915(大正4)
皆さま、こんにちは。
11月になりましたがいかがお過ごしですか。
突然ですが私、歩くことが日常的な趣味です。
健康的にウォーキング!とかではない、目的ないフラフラ歩き。
知らない街を歩くこと自体が胸躍るのですが、この路地へ入ってみよう、この駅で降りてみようと思う時には何かしら動機があるものです。
私の場合「食」に関連する何かに釣られることが多く、例えば路地にぼんやりついた赤提灯や車窓から見えた可愛らしい店先の室礼、鰻屋や焼き鳥屋から漂う香りなど。
視覚と臭覚へ訴えかけられ店へ入ってしまう食い倒れウォーキングです。
前置きはこのくらいにして、今回のタネノオトは歌舞伎十八番のひとつ『助六』からの一節。いきなり現代語訳しましょう。
三味線の撥の音色に誘われて、情夫として評判の名の通った助六が来たよ
主人公、助六の出の部分です。
『助六』は元は京都島原であった心中事件を江戸へと舞台を移した作品なので、設定は吉原。
1713年、2代目市川團十郎が山村座で初演なので元吉原から新吉原へ移転後のお話です。
〽︎撥に招かれて
吉原は「音」聴覚へ訴えて集客していたことが想像できますね。
本音はどうでも女性に釣られて吉原へ出入りしている訳ではない、という所に助六の伊達振りが伺えます。
ちなみに名取草とは牡丹のことで、ここでも助六を暗示しています。
助六の着物や傘に入った紋と帯柄をご覧いただきたいのですが、詳しくはまたの機会に。

さて歌舞伎音楽には土地と紐づいた三味線フレーズがついている形を見かけます。
実際にその土地で聞かれた音がモチーフになっていることが多く、そのフレーズを聞けば場面が分かるという「音の情報」な訳ですね。
そうした情報を持って街歩きをすると、目的のないウォーキングが途端に色鮮やかに映ったりするものです。
日本の記憶では、街歩きとその街に因んだ三味線フレーズを演奏体験してもらい、音楽で自己表現するワークショップを開催します。
吉原を歩いて助六の風情を感じてみたいと思われる方、一緒に「音」でタイムトラベルしましょう。今回のタネノオトは完全告知でした〜笑





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