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タネノオト#079

今こそ思い白雪の 身に降りかかる 憂き苦労

清元・隅田川 1883(明治16)


毎月のように清元の演目が歌舞伎へ出るのを機会に改めて演目を紐解いたりしているこの頃。

今日のタネノオトは三月大歌舞伎の第三部『隅田川』より一節ご紹介。

言わずもがな能の『隅田川』を下敷きにした演目で、主人公の女が身の上話をする場面。


この女、班女とか狂女とか呼ばれますが、その所以を語るのが冒頭。

遥々、京都より拐われてしまった子供を探す旅の道中に女は「親心」というものに気が付きます。

人の親の心は闇にあらねども 子を思ふ道にまどひぬるかな

『後撰集』に収められた兼輔朝臣が詠んだ和歌に掛け、子を持つ親の心は闇というわけではないが子どものことになると道に迷ったようにうろたえてしまうものだと。

そして今日のタネノオトに続きます。

(和歌に詠まれていた親心を)自分の身に降りかかった今、雪のような辛さや苦労を思い知りました…

「思い白雪」はもちろん掛詞。

思い知った親心は、母親の女にどれだけ重くのしかかったことでしょう。

そうそう、この話は平安時代末期にあった実話とされているんです。

解釈し直していて思うのは、やっぱり平安の貴族は教養高いよね。


『隅田川』は特に和歌の引用が多いように感じますが、時代や人物像の伏線が張られていて非常に面白い。その辺りも注目です。


第三部 午後6時30分~

二、隅田川(すみだがわ)

斑女の前 玉三郎

舟長   鴈治郎


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