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タネノオト #015

タネノオト #015

悋気嫉妬の口説きごと

清元・かさね1823(文政6)


今夏より始めたタネノオトも昨日立冬を迎え、「冬」だなんて文字を目にすると今年の残り日数をことさら意識するようになりますね。

さて冬の風情「雪見の酒盛」で引き継ぎました#015。

いわゆる“普通の”しりとりでもラ行は語彙に苦しむ私にやって来ました「リ!」

  1. 歌詞の中で

  2. 区切りよく始まる頭文字

  3. 出来たら季節感に合わせたい…

となりますと、それはそれはもう三重の責め苦。ぐぅぅ。

訳もなくツラい事の重なるのを古来より因果などと言いますが、清元の作品で因果で苦しんだ人と言えば。

この度ご紹介する『かさね(累)』ではないでしょうか。


この演目は累ヶ淵(茨城県常総市)を舞台にした怪談に取材したことで有名な物語ですが、親の因果が子に報い、それでも尚メラメラと燃える恋心、そして変り果てる我が身のあり様。

そうした状況下でありながら隠された手紙を恋文と思い込み、悋気と嫉妬に狂い思いを告げる健気な累の一節です。

実際には悋気や嫉妬ほど面倒なものはないです笑


ところで演奏では表現できない領域のひとつに芝居や舞踊での衣裳があります。

累の拵えには紅葉の意匠と鮮やかな緋色の襦袢が多く用いられますが、累が斬りつけられ血潮に染まる姿を衣裳で表しているとのこと。

恐ろしさと美しさが同居する演出が印象的で、真っ赤に色づく紅葉の季節になると『累』を思い出します。

2019年も残り53日。

ラ行三重苦の難局を乗り越えたぞ。ほっ。


参考『木曽街道六十九次之内 鵠沼 与右エ門・女房累』 歌川國芳

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